1001回目の記憶 

Missing thumb 日溜りのハコニワさんからのエピソード

どこか、いつか、それは過去か未来か、もう誰も分からない記憶



1001回目の記憶---

ナベリウスの森を駆ける。早く行かなければ。
「彼」が「自分」を亡くす前に。
しかし彼の通信機はすでに壊れ反応はない。
辿るには微かに残る彼のフォトンをたどるしか…
しかし「そう」なってしまった彼からはなにも感じない。
間に合わない…そう思った時、通信機が鳴る。
急いでオンにすると従弟の夜磐が声を張り上げ

「まきにぃ!ナベリウス凍土エリアだ!そこにあの人がいる!」
「あ、ありがとう夜磐…でもなんで…」
「行って…。振り向かないで。わ…の…は…いか…ら…」

最後の方はノイズがひどくて全く聞き取れなかった。
プツンと通信が切れ、なにも鳴らなくなった通信機を捨て
凍土エリアへ走る。
凍土エリアに入ると降り積もった雪は赤く、何人ものアークスが肉塊になっている。

ひどい地獄絵図だ。

容赦なく貫かれた身体には大きな穴が開き、顔は抉れ、中身が飛び出している。

「…ッ」

そして最深部の方角から大きな音がする。
誰かが戦っている。
急いで行かなくちゃ、じゃないと「また」…!

死体の山を飛び越え、龍型の眷属をなぎ倒し彼の元へ急ぐ。
奥に進むにつれ雪はさらに赤く染まり、吹雪も強くなっていく。
その吹雪の中突如現れたのは龍型の大型眷属。
氷の結晶を纏い、口から大量の冷気を吐き、威嚇する。

「邪魔よ!デカブツ!!」

ウォンドをツインダガーに持ち変え高く飛ぶ。
まずは左目、次に右足、次に…左足を狙おうとした瞬間、大型眷属が飛び上がり
周りに氷の鋭い結晶を含んだ竜巻を起こす。
結晶は飛び散り自分の身体を傷つけていく。

しかしそれでは自分を止められない。
ツインダガーをウォンドに持ち変えると炎のテクニックでその竜巻を消していく。
それに驚いたような素振りを見せ大型眷属は次に大量の冷気のブレスを吐く。

避けようと動くが片足が氷付き動けない。
嗚呼、また、また失敗しちゃうんだ…。

「諦めるの?」

嘲笑うような少年の声に顔を上げる。
そこには黒髪に黒いコートの少年が大剣を持ち立っていた。
そして微かにその姿に重なって金髪の少年がいる。

「…リコ、ちゃん?」
「諦めるの?大切な人なんでしょ?…なら、行ってあげなよ。ここは僕「たち」が何とかする」
「ダメよ!一人じゃ!」
「一人じゃないよ…エリカも一緒。だから僕らは負けない。こんなデカイやつに絶対負けない!」
『貴方が気づかせてくれたんだ。だから、貴方は行くべきだ』

リコリスはタリスを握り締め大型眷属の頭部まで飛ぶと大剣に持ち変えそのまま重い一撃を
大型眷属の額に叩きつける。そしてリコリスに重なっていた金髪の少年は分裂しジェットブーツで
大型眷属の首を蹴り付け深手を負わせる。
どんどん劣勢になっていく眷属をただ見ているとリコリスが叫ぶ

「カイリ!!今だ!!!」

その声と共に崖の上から紫髪の少女がアサルトライフルを構え天を撃つ。
銃弾は雨となって降り注ぎ大型眷属に止めを刺した。

「…え、す、すごい…」
「へっへん!これくらい朝飯前だよぉ!」
「ナイス、カイリ。」

消滅していく大型眷属見ながらリコリスは言う。
そして後ろから音もなく一人の女性が現れた。

「回復いたしますわ。…はい、これでいいでしょう」
「あ、ありがと…貴女は?」
「ワタクシはコルチカム…まあ、お話やお茶は無事帰ってからに致しましょう?さぁ、お行きなさい。貴方を待つ方がいらっしゃいますわ」

コルチカムに背中を押され最深部へ続く穴へ落ちていく。
その時最後に見たのは再び立ち塞がる、更に大きな眷属で…。

嗚呼どうか、彼女たちも無事で…。

戦闘音で目が覚めた。
どうやら最深部に到着していたようだ。
最深部には神殿のような場所があり、その奥で戦いは繰り広げられていた。

黒いウォンドを振り、テクニックを繰り返し繰り出す女性と、
黒い服に身を包み、背中からは骨になった翼が生えた親友が戦っている。

その女性もまた黒い衣装に身を包み、赤い瞳は更に闇を帯び、暗い色をしている。

「はぁああ!!!」
「…ふんっ」

彼らは兄妹であった「レイン」と「アイオライト」だ。
ダークファルスの力を制御できるようになったレインはその力を身にまとい
闇に堕ちたアイオライトとずっと戦っていた。
身体中傷だらけで、服もボロボロになっている。
一方アイオライトの方は余裕の笑みを浮かべ結晶のカタナで鋭い斬撃を絶えず繰り出す。
本来のアイオライトはカタナを使わない。いや普段は握らないようにしていた。
あの事件以来。彼は他人に傷つけることを恐れ、自らの殻に閉じこもり、自分を隠していた。
しかし闇に堕ち、そのリミッターが外れたことにより彼はカタナを握った。

ダークファルス【菫青】として。

「【魔女】、そろそろ決着をつけよう。」
「…させない、絶対!!お兄ちゃんを、アタシは…!!!」
「足掻いても無駄さ。アイオライトは消滅し、残ったのはこの私だ!」

結晶の刃を飛ばし彼女を攻撃する。
まともに食らった彼女はその場に倒れ、DF化が解けいつもの彼女の姿に戻ってしまった。
少しずつ近づき、止めを刺そうとカタナを振り上げる彼にツインダガーを投げる。
弾かれてしまったが注意をこちらに向けることはできた。

氷のように無表情だったダークファルスは自分を見るといつもの彼の顔を作り、

「よお。牧野」
「…」
「なんだよ、せっかくの再会じゃないか。もっと嬉しそうな顔しろよ…今、コイツを殺すからさ…」
「…!」

右手からゆっくりカタナが離れ、レインに向かい落ちていく。
ダメだ間に合わない。嫌だ、また…そんな、それだけは!!

思わず目を背ける、が、彼女の悲鳴もなにも聞こえなくて目を開けてみるとそこには、

「…装置め」

鎌状のロッドでカタナを斬り、バラバラにする夜磐の姿があった。
【菫青】は夜磐を「装置」と呼ぶと夜磐の姿が変わっていく…。
白いローブを羽織り、白いコート、左目には白い花が咲いている。
いつもの桃色の瞳から深い青い瞳に変わり、夜磐?は静かに口を開いた。

『邪魔は、させない。…マスターの願いを叶えるために!!』

レインをどこかへ転送すると一人【菫青】に向かっていく。
【菫青】の攻撃をすべて「改竄」させ未来を書き換える。
握ったロッドを再び振り斬撃を【菫青】に浴びさせる。
驚きよろけた彼に畳みかけるよう武器をロッドからカタナに持ち変え鋭い攻撃を与える。

「ッ、ぐあっ…!」

聞き手が飛び、その傷口からは黒い闇が溢れる。
その闇はぼたぼたと滴り、白い雪を黒く染めていく。
夜磐がこちらを振り向き、自分に微笑みかける…
その隙を【菫青】は見逃さなかった…。

『マスター…さぁ、彼に救……』
「夜磐!!!!」

自分の声に咄嗟に夜磐が避けようとするが一歩遅く、
彼の身体は【菫青】の新たな武器、氷の鎌で深々と貫かれていた。
血液こそ流れ出ないものの「あぁ」と呟くとゆっくりと身体が透け崩壊していく

「夜磐…!!!」
『マスター…あぁ、申し訳ございません…あとは…』

手を取る前に夜磐の身体は完全に崩壊し、足元には小さなキューブだけが残った。
淡く光るキューブは次第に光を喪い、やがては消えてしまった。
それは「装置」の停止を意味し、もう元には戻らないと示していた。

それは…「夜磐」がこの世から失われてしまったことを意味して。

「ッ…お前!!」
「よそ見をした装置が悪い。私のせいではない…さぁ…邪魔者はいなくなった。ゆっくり殺し合おうか…牧野!」

氷の神殿に響く戦闘音。
神殿の壁や柱は戦闘の激しさを物語るように崩れ落ちている。
これはいつ崩壊してもおかしくない。
それでも二人は戦闘をやめない。
これで最後にするかのように、この記憶で最後にしようとするかのように
だってもう装置は壊れてしまった。
この世から失われてしまったから。

ここで失敗したら、きっともう彼のあの笑顔はもうどこにもない。

「…お願い、イオ…答えて!!」
「無駄だ、あいつの意識は消滅した」
「嘘よ!感じるもの…イオ!お願い!みんな待ってるの!!いつまで殻に閉じこもってんのよ!!!馬鹿イオ!!!」

必死に呼びかける。すると【菫青】の表情は歪み、頭を抑える仕草を見せ始める。
相手も必死に頭を振り、何かに抵抗する素振りを見せた。
これは…

これはきっと彼がまだ残っている!
そう確信した、そして生まれた隙を利用して【菫青】を思いっきりぶん殴る。

一瞬赤い瞳は青に戻り、きょとんとした彼の顔がそこにあった。

「…ま、きの…?」
「イオ、やっぱり…!」
「っ、ぐ…貴様、消えたはずでは…!!」

彼と【菫青】が交互に入れ替わる。
彼も抵抗しているんだ、なら、こちらも手を抜けない。

骸の翼で飛び上がろうとする【菫青】の腕を掴みそのまま引き抱きしめる。
強く、強く…もう絶対に離さないというように。

「チッ…放せ!!」
「嫌よ…!今放したら…!」

お願い応えて…応えろ!

「起きなさい!イオ!!」
「やめ、やめろ…!!私は…ようやく、身体を手にいれたのに…また、また!!!」
「アンタはいらないわ。イオを返して。イオ、手を伸ばしなさい!!アタシに助けてって言いなさい!!」
「…ぁあ…ァアァ…ァアァアア…!!!」

骸の翼がゆっくりと崩れ落ち瞳も赤から青に戻っていく…。
表情も本来の彼に戻って…

ゆっくり彼の腕が首に回されると彼の唇から少しずつ言葉が紡がれる…。

「す、けて……ま、き……」
「ええ…助けてあげるわ…イオ…」

優しく微笑み、そして

結晶のカタナで自分諸共彼を貫いた。

『これも1つの結末。 次こそはマスターが幸せでありますように』


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