邂逅 

Missing thumb 日溜りのハコニワさんからのエピソード


「…今回の任務は726番艦に拠点を置いている犯罪組織の抹殺だ。」

淡い金髪のニューマンがモニターを操作しながら今回の任務をメンバーに伝える。

「アジトの詳しい場所って分かってるの?」
赤と白のオッドアイの殺人鬼はめんどくさそうな声色で問う。それにニューマンは

「……カスラからの情報によると怪しいのは元研究施設があった周辺らしい」

情報部から渡された資料に目を落としそれだけ答える。
その答えにさらに不機嫌になる殺人鬼は、はあと溜息を吐く。

「はぁ…曖昧だなあ…」

まあ皆殺しにしろってことだよね、と彼は言うと愛用の大剣を背負う。
次のその表情はこれからパーティーが始まるのを楽しみにしている子供のようだった。

「でもさ、上に目を付けられるほどの組織がなんで今まで放置されてたの?」

紫色のツインテールの女性が言う。
それについてニューマンはもう一種類の資料を提示する。
そこには密売・麻薬と書かれていた。だが一際目を引いたのは…

「…人体実験か」

人体実験をする組織などとうの昔にすべて潰したと思っていた。
まだ残っていたとはな、とニューマンは目を伏せ言う。
虚構機関の壊滅以来、何百件、何千件という数の実験施設を潰してきた。
まだ生き残りがいたとは。

「…というわけだ。危険な任務になるだろうが、頑張ってくれ」

*** 

そして集められたメンバーを見渡し、殺人鬼…リコリスは口を開いた。
「パワー系は僕とシャロンでいいのかな?カイリは隣の建物からの射撃援護、イルリキウムは回復支援、…ここまではいいよ。でもなんで君がいるのさ」
「あ?」

リコリスは碧い髪のニューマンを睨む。そのニューマンの名はアイオライト。
守護輝士の一人だ。
この任務はこちらだけの依頼ではなかったのか。
と問いかけるとアイオライトは笑って

「回復支援とパワー系のハイブリッドはいた方がいいだろ?カスラさんに頼まれたんだよ。お前らに拒否権も文句を言える資格はねえぞ」

「カスラカスラってほんっと君ってばあの陰険眼鏡の言うことしか聞かないよね!たまには僕の言うことも…」
「はいはい、痴話げんかは任務が終わってからにしましょう?」

赤い髪のヒューマン、イルリキウムが間に入る。
こいつは闇医者だ。回復支援役ではあるテクターとエトワールという職業である程度の戦闘もこなせる実力者だ。変態だが。
研究所の入り口付近に近づくとカイリから通信が入る

『なんだか変だよぉこの建物。人の気配がしないの』

建物は最近建てられたように綺麗なままで人が出入りした形跡などはないことが見てわかる。
この建物は偽物か。

「シャロン、偵察お願いできるかい?」
「りょうかい しました」

キャストの少女、シャロンは戦闘服であるキャストパーツから少女の服に着替え、研究所の入り口へ近づく。
すると透明なガラスドアは開き、その中から一人の初老の男性が出てきた。

「みちに まよちゃったの どうしたら いいですか?」

普通の少女のフリをするシャロンに男性はそっと微笑みシャロンの目線に合わせると
「市街地へはあっちだよ。」と指を差す。
その男性からは一切殺気などは感じられない。
やはり情報は間違いでは…そう思ったその時、カイリから通信が入った

『いますぐシャロンちゃんをそこから離れさせて!!』

緊迫した彼女の声にリコリスは咄嗟に大剣を構え扉に向かい走る。
するとさっきまで微塵も感じなかった殺気が男性から溢れ、
背中から触手のようなものが飛び出しシャロンを捕らえる。
バキバキと音を立てシャロンを壊そうとする触手を切り裂くと触手の中からシャロンを抱きかかえ救い出しすぐさまそこを離れる。

「な、なんだ…?」

赤黒い触手に塗れたソレはもはや人間とは呼べない姿になっていた

「ァァアアァ…イケニエ…」

ノイズ交じりの不快な声があたりに響く。

「…化け物かよ…」
アイオライトがそう呟きカタナを抜く。
こちらを攻撃しようと伸びる触手を素早くカタナを振るい切り刻んでいく。
ぼたぼたと落ちた触手はどろどろに溶け地面に染み込み草花を枯らしていく。

「まずいですね…」

短杖を取り出し全員に支援テクニックを掛けるイルリキウムは焦ったように呟く。
通信機に向かいリコリスは叫ぶ

「カイリ!奴を撃てないか!!」

それに対しカイリは

『無理だよぉ!頭がどこにあるか分かんないんだもん!』
と泣きそうな声で応答する。

「くっそ、なら…本体を殺すまでだ!!」
大剣を持ち走り強力な一撃を浴びさせる。
怪物は一瞬よろけたがすぐに体制を立て直し触手をリコリスに向け伸ばす。

「くそったれ!下手に前に出るな!!!」

触手が身体を貫こうとする寸前に高速で移動してきたアイオライトが斬撃で触手を薙ぎ払う。

「ッ、!」

残った触手を大剣を振るい叩き斬っていく。
それでも触手の数は減らず、ノイズ交じりの声はすでに怪物の咆哮と化していた。
交戦をしている二人を見守るようにイルリキウムはシャロンの傷の手当てをしていた。

「…ぁ ぁ…」
「喋らないでください、損傷がひどいんです!」

右腕は折れ、機械部分が見えていた。
それでもシャロンはなにかをしゃべろうと必死に口を動かす。
動かすたびに罅割れ、欠片が服に落ちるのも気にせずにシャロンは言葉を発する。

「ぁ ぁ…おめ、め じゃくてん おめ め」
「弱点は、目?そうなんですか!シャロン!」
「…」

それだけ言って“このシャロン”の機能は一度シャットダウンする。
それを聞いたイルリキウムは通信機も使い三人に叫ぶ。

「目です!!!それがその化け物の弱点です!!!」

それを聞いた三人はスッとそこに狙いを定める、
リコリスは大剣を双機銃に持ち替え、
アイオライトはカタナを弓に持ち変える。
隣の建物にいたカイリも“目”に狙いを定め標準を合わせる。

「弱点が分かってしまえばこっちのもの、だよね?」
「まぁ、な」

アイオライトの引く弓矢が青白く光り、
リコリスは双機銃で狙いを定め、そして三人同時に怪物の目を射抜く。
弱点を壊され怪物はサラサラと灰になり消えていく…。

「これで終わりか?」
「そうみたい」

ほっとしたのもつかの間、研究所の奥から濃い青い髪の青年が拍手をしながら微笑みを浮かべ歩いてくる。

「お見事。私の自信作を壊すとは…クククッ」

服装、雰囲気、フォトンとは違う力の気配を感じ足がすくむ。
青年は薄く笑い青い、
ジンガに似たような生物を召喚するとこちらに向け突進させてくる

「うわっ、あぶなっ!」

リコリスが避けると彼を追いかけるように今度は鋭い爪で彼の左腕を引き裂く。

「ッ、あぁ!!」
「リコリス!」

ぼたぼたと大量の血液が流れ落ち地面を真っ赤に染める。
その血を見てまた青年は薄く笑った。

「この世界の生物もやはり血潮は赤いか…興味深い…」

空中に陣を描くとリコリスの流した血を結晶化させ自分の元へ。

「お前の、血…有効活用させてもらうよ…私の偉大なる実験に、研究にな」

笑い、もう一体の召喚獣を召喚させ、その場にいる全員を倒していく。
もう絶望的か、そう思ったその時

「まだあきらめるのは早いよぉ!」

空からカイリと…見知らぬ金髪の青年が降りてくる。
その青年は赤と金の瞳のオッドアイ、
やはり目の前の謎の人物と同じフォトンではない気配を纏っていた。
そして皆が一番目を引いたのは右手に持った真っ赤な一冊の本。
オラクルではない文字が書かれている。

「クローヴィス、貴様ここに居やがったか」
「…ベルナール、やはりお前もこちらに来ていたか」

二人は知り合いのようだが良い雰囲気ではないことは明白だった。
ベルナールと飛ばれた青年と共に空から降ってきたカイリに尋ねると

「急にこの人が現れて、あの糞野郎を倒せる術を知ってるとかなんとかで…そしたらそのまま空、飛んでた…」

「…よぉ、随分こっぴどくやられたみたいだな。安心しろ…ここからは形成逆転さ…」

真っ赤な本が淡く光ると倒れていた皆の足元に大きな魔法陣が現れ、
そして傷が癒えていく。

「俺は呪いが専門でね、傷は治せても体力まではなあ…おい、そこの赤毛。お前なら治せるんだろ?」

ベルナールはイルリキウムに笑むとあとは頼んだぞと言い、
クローヴィスへ向かって魔術弾を次々と放つ。
その魔術弾を結界で防ぎ、召喚獣を使いベルナールを攻撃しようと向かわせる。

「させるかよッ!グランツ!」

召喚獣に光テクニックを当てたのは傷が癒え立ち上がったアイオライトだった。
悲鳴を上げ消えていく召喚獣。
しかしクローヴィスはさらに別の召喚獣を召喚しこちらに向かってくる。
それをカイリは一匹残さず頭部を打ち抜き消していく。

「射的やりたい放題!」
「へえ、アンタ面白い武器持ってんだな」
「アサルトライフルって言うんだよぉ!」

明らかに劣勢になっていくクローヴィスだったが彼はまた笑い、
余裕でいる。

「ベルナール、お前は勘違いをしている。お前も…私の召喚獣なのだよ!」

そう言うとベルナールの手足に赤い糸が巻き付き操り人形のようにそのまま項垂れる。

「…!!!??」
「さぁ。私の愛おしいベルナール…この邪魔な生物どもを消そうじゃないか」
「っち…くしょ…ッ!!!動けッ…!」

糸を操りベルナールの行動も操る。
無理矢理本のページを開かせ、呪いの魔術を発動させようとする。

「お前の死体に施した術だ…ああ、この世界でも正常に動くようだね…さぁ…ベルナール…」
「クローヴィス!!!貴様ァ!!!!」
「おっと抵抗するのかい?でもこの糸は切れない…これは私と、お前の魂を繋ぐ糸なのだから…」
「あわわわっ、また形成が逆転しちゃったよぉ…」

カイリはおろおろしながらアサルトライフルを構える。
下手に撃ったらベルナールに当たってしまう。
それを恐れて引き金を引けないでいる。
ベルナールも抵抗をしているがそれも時間の問題だろう。
糸は身体に食い込み、激痛を発しているようだ。

「…ここまで、なのか…」

アイオライトが呟くと背後から

「まだじゃよ。まだ…手はあるでな…」

褐色のニューマンが歩いてくる。
和服に身を包み長い黒髪を結い、巫女、を連想させる女性がそこにいた。

「…ルナリア」
「ほっほっほ。こんなそなたを見るのは珍しいのぉ…リコリス」

扇子を出しリコリスの頬を叩くと笑う。

「さて…」

正面を向き、未だ抵抗を続けるベルナールの頭上に月をあしらった陣を描くとその糸を焼き切ろうと呪術を唱える。

「この世界の魔術か…そんなものではこの糸は切れないぞ?」
「さて、どうかのお。魂との繋がりを絶てば良いのじゃろう?それは専門中の専門よぉ」

わずかだがベルナールを縛る糸が音を立て燃え始める。
彼の唱えた魔術も次第に小さくなりやがては消えた。

「なんだと…?」
「言ったじゃろ?専門だと…。」
「身体が、…これなら…!クローヴィス!!!」
「よっし、これならベルくんを撃たずに済むね!」
「クローヴィスとかいうやつに全部叩き込めばいいんだな?いくぞ、イルリキウム、援護よろしく!!」
「ああ、任された!」

シフタとデバンドで身体能力を強化させ、
全員でクローヴィスに向かっていく。しかしその攻撃も結界で弾かれてしまう。

「私には届かない…」
「硬ったい…!」
「もう少しなのに…!」

何度も大剣を叩きつけ、カタナで斬り、アサルトライフルで撃つ。
それでも結界は壊れない。
それをみたベルナールは傷ついた身体を立て直すと本を開きこの世界の言葉ではない言葉を詠唱し始める。
すると彼の右目が真紅から金にかわる
周りの草木が揺れ、青白い光が周りを包む。

「…異世界の魔術、この目で見られる日がくるとはなあ…ほっほっほ」
「…クローヴィス。これで終わりにしようか!!!」

叫んだ瞬間クローヴィスの足元から無数の鎖が現れ彼を拘束する。

「ッ…!!こ、れは…!」
「…罰だよ、しばらく受けてろ。」

大きな扉と異形の怪物が現れクローヴィスを連れていく。
それでも抵抗を続ける彼。

「…いやだ、もうすぐ完成するんだ…!!!そうしたら…ベル…お前と、彼女と…一緒に……!」

そう叫び扉の向こうに連れていかれるクローヴィスを哀れんだように見つめるベルナール。
そして周囲には静寂が訪れた。

「終わった…?」
「終わったよ。あー疲れた!!!」

地面に寝転がるベルナールを取り囲むように皆が集まる。

「…えっ。な、なに…?」
「まずは、お前のことを詳しく聞かなきゃな。」
「カイリを抱っこしたの?許せないなあ」
「ジルベールさんのとこに連れていきますか」

この事件はこれにて終了…。そう誰もが思っていた。
扉の中で彼は息を潜め、再び舞い降りる機会を狙っているとも知らずに。

ナベリウス遺跡エリアにてーーー

「…分身なんてこの世界に何体置いてると思ってるんだい?ベルナール…クククッ」


このエピソードの登場人物